100パーセント理想的じゃなくても 大切なのは心がけかも

先日、赤の7号で『水樹奈々奥井雅美』の話が出たので、少し遅れて便乗しつつ展開。
ちょっと前から言おう言おうとしてたネタですし、ちょうど先日のラジオでも触れて、語ってくれと言われてたネタでもあるし。




私が歌手としての水樹奈々をに興味を持ったのは、『Memories Off 2nd』のエンディング曲である『オルゴールとピアノと』、キャラクターソングの『遠いこの空から』を聴いて、歌上手いなぁと思ったのがきっかけでした。
さらにほぼ同時期に、「奥井雅美のバックバンド『ロイヤルストレーツ』の住吉氏が水樹奈々をプロデュースする」という情報を耳にしたので、じゃあCD聴いてみるか、と。
その後はご承知のように、水樹奈々スターチャイルドから曲を出しつつ、志倉千代丸作詞・作曲などでキャラソンを歌ってたわけです。
後者の流れで生まれたのが名曲と評される『リプレイマシン』であり、またその縁に因るものか志倉氏はアルバムなどにも参加しています。この辺りの事情は特に説明する必要もないでしょう。
余談ですがこの『リプレイマシン』、曲自体は文句なく名曲なのですが、その出自はある意味かなり間抜けです。
ゲームに出演してない声優が主題歌だけ歌うってのはどうなんだ……。



さて本題。
現在一般的に言われる
水樹奈々奥井雅美っぽい』
というのは、私から見れば
水樹奈々は昔の奥井雅美っぽい』
というのが正しいと思います。
あるいは、
水樹奈々矢吹俊郎の作曲で歌ってた奥井雅美っぽい』
とも言えるかもしれません。


今でこそ水樹奈々のプロデューサーは矢吹氏ですが、既に述べたとおり、かつて奥井雅美のバックバンドでベース担当だった住吉氏がプロデューサーをしていた1stアルバム『supersonic girl』の頃までは、まだ前述したような言説は特にありませんでした。
やはり『TRANSMIGRATION』が重要なターニングポイントになっているのは異論のない所かと。
元々『TRANSMIGRATION』は、水樹奈々が出演していたラジオのセルフプロデュース企画で、作曲を矢吹俊郎に、作詞を奥井雅美に依頼して完成し、1stアルバムに収録された曲です。
おそらくこれが、水樹奈々矢吹俊郎奥井雅美の(一般的な)最初の接点のはずです。


アルバム発売後、スタチャ内部で何があったのかは知る由もありませんが、いずれにせよ矢吹氏はその後『POWER GATE』に参加し、2ndアルバム『MAGIC ATTRACTION』では遂にプロデューサーに。
1stと2ndでは作詞・作曲・編曲含めたスタッフが事実上総入れ替えになってる状況で、大平氏が作曲・編曲で参加してたり、ベース担当としての住吉氏とサックスのファイヤー=藤岡氏だけが残っているのを見た時は何とも微妙な気持ちになりました。
奥井雅美のバックバンドでも主に魅せていたこの二人(私はドラムのパパゴン=佐藤氏やギターの遠藤氏・渡辺氏も好きでしたが)だけが参加しており、さらに1曲目がインストゥルメンタルになっているというアルバム構成などを見れば、奥井雅美ファンならば
スタチャ水樹奈々にかつての奥井雅美のコピーをさせようとしている』
という穿った見方をしてしまうのも、むしろ自然とさえ思えます。
スタチャの戦略がそのようになったとすれば、やっぱり奥井雅美の独立に対する大多数のファンの反応はあまりよろしくなかった、という事なんでしょうか。
この説、論拠も結論も殆ど全て伝聞と推測に拠っているのでどうにも説得力に欠けるのがアレですが……。


誤解のないよう言っておくと、別に矢吹氏の曲が嫌いな訳ではないです。
ただ、ラジオでも言った
水樹奈々の曲で、住吉氏の曲は10回聴く気がしない。矢吹氏の曲は10回聴くと飽きる」
というのは非常に乱暴ですが、私のかなり正直な感想です。
もうこの辺の話になってくると、今までの部分以上に私の好みが主軸に絡んでくるのですが、『奥井雅美が歌う矢吹氏の曲』だとそこまで飽きるような曲はないんですよね。
同じ矢吹氏作曲なのに、私にとってそれだけの差が生じる原因として思い付くのは
『曲調が(曲が違っても)あまり変わらない気がする』
という点に尽きます。
『歌詞がダメ』とかいう人もいるようですが、これはもう絶対的に嗜好の問題だと思うので。タイプは違っても、私は矢吹氏の歌詞も結構好きですし。


というか曲調という言葉で私の意図が正しく伝わるかどうかは少し疑問なのですが、要するに私が言いたいのは
『曲の構成や使ってる音の種類が変わってない気がする』
って事です。
曲の構成ってのはわかりやすいと思います。例を挙げるなら、最後のサビの後にさらに一言入れる、みたいな感じのパターン。
さらにクレジット見ると殆どをシンセの打ち込みだけでやってる曲が多い気がするのですが、その中で使われてる音色が殆ど同じ曲が多いように感じます。
『TRANSMIGRATION』『POWER GATE』『suddenly〜巡り合えて〜』『PROTECTION』『New Sensation』などで特にその辺りの印象が顕著な気が。
ひろゆきさんも以前「時々曲を間違える」みたいな事を言われていたように記憶してますが、要するに『どれも同じような曲っぽい』という意見が出るのも、さもありなん。
ついでに言うと、今挙げた曲の殆どがシングル曲というのも、既に述べたコピー説の根拠と言えば根拠です。
大して音楽に聡い訳でも、人より立派な聴覚を持ってる訳でも無いのにこんな事を言うのは失礼かも知れませんが、素人には判らないレベルの違いなんてのはそんなに意味が無いとも思いますし。


さらに言うなら、矢吹氏の曲は基本的にライブ向きだというのが私の持論なのですが、水樹奈々が歌ってる曲で奥井雅美のライブのような周りの盛り上がりが出るのかという点が個人的には疑問。
これは単に『盛り上がらない』という意味ではなくて、文で説明するのが非常に難しいのですが、歌手とバックバンドのコンビネーションによるパフォーマンス、とでも言うんでしょうか。
『BEST-EST』や『Li-book 2000』の曲は殆どそれがあるんだけど……『BEST-EST(Disc2)』の『恋しましょ ねばりましょ』や、『Li-book 2000』の『虹のように』のような感じ。
それが水樹奈々のライブであるのかなぁ、という疑問です。
これはもう実際水樹奈々のライブに行ってみないと解りませんが、話を聞く限りではどうもあまり芳しくない印象を受けます。
私が考えてるこのような盛り上がりを、水樹奈々のライブに参加する側が必要と思うかどうかはまた別の問題ですが、少なくとも奥井雅美のライブで矢吹氏の曲が歌われた時にはそれがあったのは事実ですし。
ついでにまたしても例のコピー説を持ち出すなら、スタチャ側はこのような『盛り上がり』の部分は声優を歌手として売るには不要と判断して切り捨てた、という推測も成り立ちます。
再三言うように、確たる証拠のない仮説を根拠にしている時点でマトモな説得力は無きに等しいんですが、要はこういう風にも考えられてしまう、ということです。
(これをさっき原因のとしてすぐに挙げなかったのは、根拠がどうにもアヤシイから)


結局のところ私が現状に対して思うのは、あえて辛辣な言い方をすれば
『矢吹氏が水樹奈々に提供しているのは、奥井雅美に提供した曲の劣化コピー
ということになるかと。



そこで結論として言いたいのは、
「矢吹氏もっと頑張れ」
って事です。
水樹奈々の歌唱力は相当なものがあると思いますし、現在のスタイルであってもそのテイストにバリエーションを持たせるのは十分可能な筈。
大多数の水樹奈々ファンが持つ奥井雅美のイメージは、おそらく矢吹氏と組んでアニソンメインで歌っていた頃のものでしょう。
となると、矢吹氏が曲を書く以上は、水樹奈々は多かれ少なかれ『なんか奥井雅美っぽい』という呪縛に囚われる蓋然性を背負わざるを得ません。
ある意味でその状況を打破しうるのが志倉氏ですが、しかしやはり矢吹氏に『水樹奈々の曲』を書いて欲しいです。


勝手に言わせてもらえば、水樹奈々の曲の中で、最も――良い意味で――奥井雅美に近かったのは『POWER GATE』だと思います。
そこからの2ndアルバムや数枚のシングルは、色々と模索し続けていた時期ではないかと。
しかし、『still in the groove』に収録された3曲には、何となくこれからの方向性が垣間見えた気がします。


以上長々と偉そうな事を書いてきましたが、3rdアルバムの発売も決まったそうで。
これからの歌手としての水樹奈々は、今まで以上に楽しみです。






最後にもうひとつ、この文章を書くにあたって色々調べてた最中に思った事を。


私はいわゆる奥井雅美ファンという方との交流が限りなく少ないので、例の独立の時とかに『大多数のファン』がどういう風に感じたかは判りませんが、私自身は、いわゆる切り捨てられたとかいう印象は全くありませんでした。
最初に知ったきっかけはアニソンでも、別に曲を聴く分にはそれがアニソンかどうかなんて関係なかったですし。むしろそうじゃなきゃアルバムとかは買わない気がします。
アニソンだからこそ好きだという曲もあるし、JAM Projectへの参加や、『奥井雅美』としてのアニソンカバーアルバム『マサミコブシ』の発売なんかは素直に嬉しかったですが、独立してから特にアニソンを歌わなくなったのも、曲が出ている以上別に気になることはなかったです。
独立後のアルバム『DEVOTION』『crossroad』はどちらも素晴らしい出来だと思いますし、JAM Project featuring 奥井雅美としてソロで歌った『Little wing』『In the chaos』、あるいは米倉千尋とのユニットでの『Candy lie』。
舞台がどこであれ、奥井雅美が作詞・作曲して――たまにはしてなくても――歌ってればそれで十分。
私はこんな風に思ってますが、そういう風に思ってる人は少ないんだろうか…………だとしたら残念です。